救護施設とは

救護施設は、身体や精神の障害や、何らかの課題(生きづらさ)を抱えていて、日常生活を営むことが困難な方たちが利用している福祉施設です。
利用者一人ひとりのその人らしい豊かな生活の実現に向けて、日常生活支援や生産活動等を通して生活の基盤を整え、就労や地域生活移行など、利用者の目標や意向に沿ってそれぞれの自立を目指した取り組みを行っています。

法的位置づけ

救護施設は社会福祉法第2条によって定められた第一種社会福祉事業で、生活保護法第38条第1項第1号によって規定された保護施設のひとつです。同第2項には、次のように定められています。

生活保護法第38条第2項

「救護施設は、身体上又は精神上著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする施設とする。」

生活保護法第3条では、「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。」と規定されており、日本国憲法にうたわれている「健康で文化的な最低限度の生活」を保証する施設です。

救護施設を利用する方

身体障害・知的障害・精神障害といった障害の種類による対象者の限定はありません。実際に、救護施設には、身体障害のある人(視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、等)、知的障害のある人、精神障害のある人、それらの障害を重複して持つ人、アルコール依存症の人、ホームレスの人など、多様で複合的な課題を持つ人々が生活しています。

支援を必要としている方を幅広く受け入れる救護施設は“地域におけるセーフティネット”として、 命と生活そのものを支える存在となっています。

利用者の状況

※全国でおよそ17,000 人の方が利用されています。
(「平成28 年度全国救護施設実態調査報告書」より(平成28 年10 月1 日現在))

利用者支援の基本理念と実践的目標

救護施設は要保護者を入所させて生活扶助を行う施設であると規定されていますが、実際のサービス内容は、利用者の実態に合わせて法文上の規定を超えて広がっています。
こうした実態を背景に、平成13年7月、救護施設サービス評価基準を作成するにあたり、利用者支援の基本的な考え方として、以下のとおり、基本理念と実践的目標を定めています。

基本理念

救護施設は、障害の種類等を問わず支援を要する者がともに生きる場として、利用者を地域で生活する市民として尊重し、その基本的人権と健康で文化的な生活を保障する。と同時に、利用者の幸福の追求と、その人らしい豊かな生活の実現の支援に最大限努める。

実践的目標

1. 利用者の基本的人権を保障し、主体性を尊重した自己実現の支援を図る

利用者を独立した人格として尊重し、人権の擁護に最大限努める
利用者が主体的に自己実現を図れるよう、できる限り支援する

2. 多様な障害や課題を持つ利用者のニーズに応じたサービスを提供する

利用者個々の生活の困難さに対応したサービスを提供する
ノーマライゼーションの考え方を踏まえ「ともに生きる」ための生活環境を構築する

3. 地域の社会資源におけるネットワークを構築し、地域に根ざした施設をめざす

他法、他機関を含めた地域の社会資源とのネットワークを活用し、利用者のニーズに応じた支援を提供する救護施設自身が地域の社会資源として機能することを目指す

救護施設で実施しているサービス

救護施設は、さまざまな障害がある人が健康で安心して日常生活をおくる場です。一人ひとりの抱える問題を受け止めて、誰もがその人らしい人生をおくることができるよう支援します。なお、サービス内容の詳細は施設ごとに異なっています。

日常生活支援 介護サービス、健康管理、相談援助
リハビリテーションプログラム 身体機能回復訓練、日常生活動作・生活習慣等の訓練
自己実現の支援 就労支援、作業活動、趣味・学習活動、レクリエーション
地域生活の支援 通所事業、居宅生活訓練事業、グループホームの運営、配食サービス、など

救護施設は、利用者にとって最適な自己実現が図られるよう、自立に向けた個別の支援を行います。

サービスの提供にあたっては、利用者の希望・要望も聞きながら利用者と支援者が一緒になって「個別支援計画」を策定し、支援を行っています。

入退所のプロセス

原則として居住地を管轄する福祉事務所に対して、本人か、またはその扶養義務者等が申請し、保護実施機関(都道府県知事、市長及び福祉事務所を設置する町村長)による「措置」により入所が決まります。

地域における生活困窮者支援

① 救護施設居宅生活訓練事業
施設を退所して居宅生活に移ることを希望される利用者を対象に、アパート等を利用し社会生活力を習得するための訓練を行っています。

② 保護施設通所事業
退所者の居宅生活を支援するため、通所または施設職員の訪問により、生活全般の相談・支援を行う事業を行っています。

③ 一時入所
居宅で生活する人が一時的に精神状態が不安定になった場合などに、精神状態の安定を図るために、短期間救護施設を利用したり、DV被害者等の保護等のため緊急一時保護を行っています。

④ 移行促進
救護施設は、利用者の地域での自立生活をめざし、循環型セーフティネット施設として機能するために、利用者の地域や他種別施設等への移行促進を図っています。

⑤ 交流事業
救護施設の機能を活かし、地域における福祉の拠点となるために、ボランティアの受け入れをはじめ、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、教員などを志す学生の実習受け入れ、地域住民との交流事業、社会福祉協議会と連携した地域福祉活動などにも取り組んでいます。

⑥ 地域への開放
地域の生活困窮者等を対象とした相談活動、介護教室、配食サービス、集会室等のスペース提供、福祉機器等の貸し出しサービスなど、各施設が工夫して様々なサービスを行っています。