全国救護施設協議会 平成25年度事業報告 T. 基本方針  本協議会は、平成19年4月『救護施設の機能強化に向けての指針』をとりまとめて以来、 救護施設の利用する方および地域社会・住民等からの期待に応えられる救護施設をめざし て取り組みを充実してきた。その中心は、これまで社会のセーフティネットとして果たし てきた役割と、地域生活移行支援機能のいっそうの強化をすすめているところである。  救護施設には、身体・知的・精神などの障害がある人、経済的困窮にある人をはじめ、 矯正施設等退所者、ホームレス状態にあった人、暴力被害者など、さまざまな生活上の困 難を抱える人びとが利用しており、社会のセーフティネットとしての役割を担ってきてい る。  現在、210万人を超えてなお増え続けている生活保護受給者や、生活保護受給に至っては いないものの、経済的困窮に直面している人、地域のなかで孤立している人への自立支援・ 生活支援が社会的課題となっている。一方で、国は従来の生活困窮者支援体制や生活保護 制度のあり方等について、制度創設以来ともいえる見直しを進めている。  救護施設が、今後も地域のセーフティネットとして、今日の社会的要請に応え続けてい くためには、利用者だけに止まらず、これまでに培ったノウハウを生かし、救護施設が有 する機能を最大限に発揮しながら、地域に暮らす生活困窮者への支援をも担っていくこと が使命といえる。  こうした状況を踏まえ、本協議会では、平成24年度に「救護施設における生活困窮者支 援に関する特別委員会」を設置し、「救護施設が取り組む生活困窮者支援の行動指針」を 策定した。平成25年度は「行動指針」に基づき、各地区協議会との連携のもと、以下の事 業を実施した。 U.事業の内容  1.「救護施設が取り組む生活困窮者支援の行動指針」の推進  (1)各施設における「行動指針」の普及     事業への取り組み状況を確認するためにアンケートを実施した。アンケート結果 は大西会長が第37回全国救護施設研究協議大会の基調報告にて説明するとともに、 会報『全救協第143号』に掲載した。  (2)「行動指針」に示された事業の取り組みの推進    先行して実施している実践例などをもとに、各事業の進め方の参考に資する『行動 指針の手引き』の作成を進めた。また、全国大会・研修会や各地区協議会大会にお いて「行動指針」にかかる説明や実践を紹介するなど、各施設が事業に取り組める よう支援を行った。  (3)全救協における生活困窮者支援の取り組みの発信     「行動指針」にもとづく取り組みとして、全社協においてマスコミとの懇談会が 開催(8月21日)されるなか、大西会長及び執筆者のひとりである田坂特別委員会委 員が出席し、朝日新聞、NHK、共同通信、福祉新聞、毎日新聞など、十数名の報 道関係者出席のもと、取り組みの目的や内容等を紹介した。 また、全社協『月刊福祉』の9月号のトピックスにて「行動指針」の取り組みの目 的や内容等を紹介するとともに、全社協『生活と福祉』の12月号にて「生活困窮者 支援における施設と福祉事務所の連携を考える」をテーマとした座談会に松田制度・ 予算対策委員長が参加され、救護施設や全救協の取り組みを述べた。加えて、同誌 にて田坂総務・財政・広報委員長が救護施設の諸活動を紹介した。     さらに、大西会長及び品川副会長が第7回社会福祉法人の在り方等に関する検討会 のヒアリング(3月17日)に参加。行動指針による本会の取り組みや会員施設の生活 困窮者支援の取り組みを説明するとともに、救護施設を運営している社会福祉法人 の更なる取り組み、社会福祉法人の透明性の確保ならびに適切な監督指導等につい ての意見を述べた。    2.「救護施設の機能強化に向けての指針」を踏まえた機能強化の推進  (1)セーフティネット機能の強化    @さまざまな支援ニーズや利用者の状況に応じるための、救護施設の機能の検討    A精神障害のある生活保護受給者等の相談・支援体制づくりの推進     『救護施設における精神保健福祉士の役割・機能にかかる調査研究事業報告書』 を作成し、会員施設に向けて救護施設の相談支援機能を高めるための支援ツール として普及を図った。報告書は全救協のホームページに掲載し、活用を図った。  (2)地域生活支援の推進 @地域生活支援関係事業(保護施設通所事業、居宅生活訓練事業、一時入所、居宅 生活移行支援事業)への取り組みの推進     A『改訂版 地域生活支援関係事業ガイドブック』の改訂に向けた検討  地域生活支援事業の着実な実施に向けて、全国大会や経営者・施設長会議など において、情報提供や意見交換等を行った。会報『全救協142号』ブロックだよ りにて、取り組み事例を紹介した。  制度・予算対策委員会にて、「救護施設居宅生活訓練事業」の内容変更等を整 理するとともに、『改訂版 地域生活支援関係事業ガイドブック』を頒布する際 には、「社会福祉施設における施設機能強化推進費の取扱いについて」等を添付 することとした。(平成25年度頒布数:108部/平成26年3月31日現在)    3.利用者主体の個別支援の推進     @個別支援計画書の普及・活用の推進     A各地区における施設の個別支援計画に関するスーパーバイズを担う職員の育成     『救護支援個別支援計画書』を増刷し、普及・活用に努めるとともに、「利用者 主体の個別支援への取り組み」をテーマに全国大会第2分科会において、『救護 支援個別支援計画書』を活用した利用者支援のあり方について討議・研究を行っ た。        (平成25年度頒布数:140部/平成26年3月31日現在)  4.利用者の人権を尊重した支援の推進     @救護施設職員への人権を尊重した支援の徹底     A『障害者虐待防止の手引き(チェックリスト)』および『障害者虐待防止の研 修のためのガイドブック』を活用した利用者への虐待防止の徹底     B厚生協・暴力被害者支援ツール『あなたの歩み』の普及・活用      救護施設福祉サービス研修会において、「施設利用者の権利擁護」をテーマに 弁護士の平田 厚氏の講義および「施設利用者の虐待防止に向けて」をテーマとし たグループワークを実施し、利用者の人権を尊重した支援の在り方の理解を深めた。 また、『あなたの歩み』の活用等の具体的手法などを学び、暴力被害者支援機能 の充実を図ることを目的とする「平成25年度暴力被害者支援スキルアップ講座」の 周知を図った。  5.『改訂新版 救護施設職員ハンドブック』の普及・活用     平成22年度に発行した『改訂新版 救護施設ハンドブック』について、救護施設 の職員・関係者の基本書として広く活用いただくよう、昨年度に引き続き、希望する 会員施設へ頒布した。(平成25年度有償頒布数:163部/平成26年3月31日現在) 6.全国大会・研修会等の開催  (1)第37回全国救護施設研究協議大会   期 日;平成25年10月3日(木)〜4日(金)   会 場;神戸ポートピアホテル(兵庫県神戸市)     テーマ;「救護施設が進める生活困窮者支援」     参加者;625名     内 容;@開会式         A平成25年度永年勤続功労者表彰         B来賓挨拶          ○兵庫県知事 井戸敏三氏          (代読:兵庫県健康福祉部福祉監 真木高司氏)          ○神戸市長 矢田立郎氏          (代読:神戸市保健福祉局総務部長 小原一徳氏)          ○神戸市社会福祉協議会理事長 今井鎮雄氏          (代読:神戸市社会福祉協議会常務理事 中川徳一郎氏)         C基調報告           「今、取り組むべき生活困窮者支援〜救護施設の将来展望〜」           全救協会長 大西豊美         D行政説明           厚生労働省社会・援護局保護課 課長補佐 川久保重之氏         E分科会          ○第1分科会「生活困窮者支援の推進」          ○第2分科会「利用者主体の個別支援の取り組み」          ○第3分科会「地域生活支援への取り組み」          ○第4分科会「サービス等の向上に向けての評価への取り組み」          ○第5分科会「利用者のQOL(生活の質)を高める支援」         F懇親会         G行政説明・意見交換「生活困窮者支援制度について」           説明:厚生労働省社会・援護局地域福祉課             生活困窮者自立支援室長 熊木正人氏           進行:救護施設における生活困窮者支援に関する          特別委員会委員長 本田英孝         H記念講演 「私の野球人生」          プロ野球解説者 矢野燿大氏  (2)平成25年度救護施設経営者・施設長会議 期 日;平成25年4月22日(月)〜23日(火) 会 場;東京都内・全社協会議室     参加者;141名     内 容;@行政説明          厚生労働省社会・援護局保護課課長補佐 山本 亨氏         A情報交換会         B基調報告          全救協会長 大西豊美         C説明「救護施設が取り組む生活困窮者支援の行動指針の概要について」          全救協 救護施設における生活困窮者支援に関する特別委員会「行動指針」 執筆担当委員 田坂 成生、松田 昌訓、大塚 晋司         D質疑・意見交換「地域の生活困窮者支援の推進に向けて」         進行:全救協 救護施設における生活困窮者支援に関する特別委員長             本田 英孝  (3)平成25年度救護施設福祉サービス研修会 期 日;平成25年11月14日(木)〜15日(金)  会 場;東京都内・タイム24ビル     参加者;138名     内 容;@説明「救護施設が取り組む生活困窮者支援の行動指針」 全救協 救護施設における生活困窮者支援に関する特別委員会委員/ 静岡県・清風寮 施設長) 田坂 成生         A講義T「救護施設が担うべき役割〜生活保護法改正等の動向と救護施 設への影響〜」          首都大学東京 都市教養学部 教授 岡部 卓 氏         BグループワークT「救護施設が取り組む生活困窮者支援の現状と課題」          助言者:全救協 救護施設における生活困窮者支援に関する特別委員会 委員 田坂 成生(静岡県・清風寮 施設長)               松田 昌訓(大阪府・フローラ 施設長)               大塚 晋司(兵庫県・南光園 施設長)          進 行:全救協 調査・研究・研修委員会 委員         C講義U「施設利用者の権利擁護」          明治大学法科大学院 教授・弁護士/日比谷南法律事務所/障害者虐待 防止の手引き(Ver.3)監修・執筆者 平田 厚 氏         D実践レポート「心の病をくぐりぬけて」          大阪市職業リハビリテーションセンター 講師          森 実恵 氏         EグループワークU「施設利用者の虐待防止に向けて」          助言者:全救協 副会長 品川 卓正          進 行:全救協 調査・研究・研修委員会 委員   (4)第38回全国救護施設研究協議大会(北陸中部地区)の開催準備     地元北陸中部地区との連携のもと、平成26年10月23日〜24日、メルパルクNAGOYA において開催することを決定し、開催準備をすすめている。    7.協議会組織の強化  (1)各地区救護施設協議会組織の活動の促進  全国レベルの活動との連携を強化しつつ、各地区協議会における諸活動の円滑 な運営を図りながら、各地区の大会において中央情勢報告を行うとともに行動指 針の説明を行うなど情報共有に努めた。  <地区大会開催状況>  北海道地区  6月13日(木)〜14日(金) 北海道滝川市  東北地区   6月26日(水)〜27日(木) 山形県天童市  関東地区   6月27日(木)〜28日(金) 群馬県高崎市  北陸中部地区 7月17日(水)〜18日(木) 長野県諏訪市  近畿地区   6月20日(木)〜21日(金) 奈良県奈良市  中国四国地区 6月 6日(木)〜 7日(金) 高知県高知市  九州地区   7月 4日(木)〜 5日(金) 大分県別府市  (2)永年勤続功労者表彰     平成25年度は98名が受賞。第37回全国救護施設研究協議大会開会式のなかで、今 年度の全国救護施設協議会永年勤続功労者への表彰が行われた。  (3)組織・財政の充実・強化(会費規程の検討含む)     総務・財政・広報委員会において、財政基盤の強化を図るために、研修会等の収 入にたよらない運営を行うことなど、会費の見直しに関する検討を進めた。 前期末支払資金残高(繰越金)を行動指針の策定や災害対応に活用することは必 要なことであり、今後は各都道府県の状況をふまえ各施設の意見を伺いながら会費 の在り方について検討していくこととされた。 (4)「全救協便覧」の発行     平成25年度全国救護施設協議会便覧を6月に発行し、会員施設に配付した。 8.広報・情報提供活動の強化  (1)会報『全救協』の発行   社会福祉制度・施策の動向、本会の諸活動や各地区の動向等を内容とし、会報 『全救協』を発行した。 @142号(平成25年7月22日発行) 特集「平成25年度全救協総会・役員改選報告」 A143号(平成25年11月25日発行)特集 「全救協における自然災害への取り組み」     B144号(平成26年3月20日発行) 特集「第37回全国救護施設研究協議大会報告」  (2)制度・施策関連情報の提供 社会福祉制度・施策に関する情報提供を目的とし、『全社協 障害福祉関係ニュー ス』の発行に協力した(9回発行)。  (3)全救協ホームページの充実 全救協の事業や救護施設に関する一般市民への広報・情報提供、および会員施設 相互の情報交換等を目的とし、ホームページの充実を図るため、会員施設情報を都 道府県ごとに検索できるようにレイアウトを変更した。また、「行動指針」及び「 災害対応マニュアル」を掲載して広く周知を図った。    9.制度・予算対策活動の推進  (1)救護施設をめぐる制度等の改善および予算要望に向けた対応 救護施設の最低基準やサービス提供体制、地域生活移行支援の充実等に必要な制 度改善、予算確保等を図り、国等に向けた要望活動を実施するため、平成27年度に 向けた制度・予算要望を各地区から取りまとめた。 平成25年5月15日、厚生労働省発社援0515第10号通知(以下、「10号通知」)「生 活保護法による保護施設事務費及び委託事務費の支弁基準について」(特例法適用 後の公立施設分)が発出された。10号通知は、「国家公務員の給与の改定及び臨時 特例に関する法律」によるもので、平成25年7月から地方公務員の給与の減額が始ま ることとなる。あわせて、公立の救護施設の一般事務費が改定された。10号通知は、 設置者が自治体(公立)であれば適用され、公立公営および公立民営の救護施設が 該当する。10号通知は指定管理施設も該当するため厚生労働省に対して、改善を促 した。 障害者施設等火災対策検討部会に田坂総務・財政・広報委員長が参加し、275u未 満の救護施設についてもスプリンクラー設備の設置をすべきことについて検討が行 われた。一部例外はあるものの、原則、スプリンクラー設備の設置を義務付ける報 告がまとめられた。 「社会福祉法人の認可について(通知)」の一部改正案に対して、事務負担軽減 を図るための経過措置として、「現況報告書」の提出期限を数か月延長できるよう 厚生労働省社会・援護局福祉基盤課に意見を提出した(パブリックコメント)。    (2)全国社会福祉協議会・政策委員会との連携 全国厚生事業団体連絡協議会を通じて連携し、活動を推進した。  (3)社会福祉法人新会計基準移行への対応     新会計基準移行に関して、必要に応じ、会員施設への必要な情報の提供を行った。  (4)地域主権改革にともなう都道府県等の動向の把握・対応     保護施設の最低基準にかかる都道府県・指定都市・中核市の条例制定の各地の状 況等を把握し、必要な対応を行った。制度・予算対策委員会において最低基準の条 例委任に伴う変更点および影響等について把握することを目的に調査を実施し、各 都道府県の状況を把握した。条例委任に伴う変更点、運用レベルからの変更につい ては特に課題となる点は見られなかった。 10.調査研究活動の推進  (1)平成25年度救護施設実態調査 平成25年度救護施設実態調査を実施した。調査集計・分析を行い平成26年6月に報 告書を作成することとしている。  (2)情報収集アンケートの実施と活用     「行動指針」事業への取り組み状況を確認するために、アンケートを実施した。(再掲) 11.災害時における支援体制の構築 (1)全救協「災害対応マニュアル」の理解の徹底 昨年度作成した「災害対応マニュアル」については、全救協ホームページに掲載 し、普及を図った。  (2)災害対応積立金の創設 災害時の支援活動に資する積立金を創設し、平成25年度は5,000,000円を積み立て、 全救協の支援体制の充実を図った。 V.会務の運営 会務を進めるために、以下の会議を開催した。 1.総会の開催 期日; 平成25年4月22日(月) 会場; 東京都内・全社協会議室 2.理事会の開催     (第1回) 平成25年4月22日(月)/東京都内・全社協会議室    (第2回) 平成25年10月2日(水)/神戸ポートピアホテル(兵庫県神戸市)    (第3回) 平成25年12月4日(水)/東京都内・全社協会議室    (第4回) 平成26年3月5日(水)/東京都内・全社協会議室 3.正副会長・委員長・地区会長等会議の開催 4.専門委員会の開催  (1)総務・財政・広報委員会     (第1回) 平成25年6月17日(月)/東京都内・全社協会議室     (第2回) 平成26年2月25日(火)/東京都内・全社協会議室  (2)制度・予算対策委員会     (第1回) 平成25年8月2日(金)/東京都内・全社協会議室     (第2回) 平成26年2月18日(火)/東京都内・商工会館  (3)調査・研究・研修委員会     (第1回) 平成25年7月19日(金)/東京都内・全社協会議室     (第2回) 平成26年2月5日(水)/東京都内・商工会館  5.特別委員会の開催 生活困窮者支援「行動指針」を積極的に推進するために、特別委員会を開催した。  (1)救護施設における生活困窮者支援に関する特別委員会     (第1回) 平成25年7月22日(月)/東京都内・全社協会議室     (第2回) 平成25年12月4日(水)/東京都内・全社協会議室     (第3回) 平成26年3月5日(水)/東京都内・全社協会議室  (2)救護施設における生活困窮者支援に関する特別委員会(作業委員会)     (第1回) 平成25年9月4日(水)/東京都内・全社協会議室     (第2回) 平成25年11月13日(水)/東京都内・全社協会議室     (第3回) 平成26年1月29日(水)/東京都内・全社協会議室     (第4回) 平成26年2月20日(木)/東京都内・商工会館